冒険少年

冒険少年 (ビッグコミックススペシャル)

冒険少年 (ビッグコミックススペシャル)

大御所あだち充の最新短編集。少年だった大人が過去を思い出したり、紛れ込んだり…というのがテーマのシリーズ。
印象としては「あだち漫画藤子不二雄F風味」といった所かな?

最近、思うようになったのですが、あだち充って、漫画を道具として上手に使う人だななぁと。
よく、あだち充の漫画は登場人物の顔がワンパターン*1と言われますが、それって、結局、キャラクターを記号として使っている事に他ならないのではないだろうかと。
「この顔は主人公です。」「この顔はヒロインです。」「この太った男の子は主人公の親友です。」「この顔は主人公の女好きの友人です」「この顔じいさんは只者ではありません。」「この顔は通りすがりのエキストラです。」
どうでしょう?それぞれに対して該当する「顔(記号)」が頭に浮かんできたのではないでしょうか?
後はこれに基づいて設定を付け足してやれば、特に人間関係を説明をする事無くストーリーを進める事ができます。判り易い(笑)

あと、本人も謙遜して言っていますが、よく「手抜き」といわれる風景のコマは、印刷媒体であり、読む早さが読者まかせである漫画という媒体で、作者の意図に近い「間」を演出するために使われて効果を出しているのではないでしょうか。これは同じ印刷媒体である小説とかでは中々コントロールしにくいのではないかと思うのです。アニメやドラマでは映像に現されたものが絶対になってしまうので、見ている側の感覚的な物は入る余地がありませんし。

こういった辺りから、あだち充という漫画家は、自分の考えたストーリーを、漫画というツールが持つ特性を上手く使って表現する人なのではないかと最近、思うようになったのですが…。どうなんでしょう?
キャラ造形とかを重視しない創作姿勢が読者の好き嫌いを作ってしまう要因になっているとは思うのですが。

*1:でも、よく見るとヒロインは有る程度、見分けが付いたりするのですが…